1級・2級の試験では必ず出題される「幾何特性」と「データム」。
今回は幾何特性のうち「形状公差」について解説します。
3級を受験予定の方は覚える必要がない内容ですので、もしも興味があれば読んでみてください。
Contents
形状公差の種類と特徴
形状公差の種類は以下の6種類で、
それぞれ幾何特性記号が定められています。

また、形状公差にデータム指示はありません。
データムって何?
という方はこちらの記事で「データムとは?」についてまとめていますので、先に読んで頂くと、より理解が深まります。
真直度
真直度のイメージ
真直度のイメージは、「円筒の軸線がどれだけぶれて良いか。」という公差指示です。
図のように、「軸線」(※製品ではない)が黄色で囲われた範囲内に収まることを指示するのが「直線度」です。
厳密に言えば面の指示もあるのですが、直線度は軸線に対して使われるものと覚えてしまって問題ないですね。
図の黄色い円筒(公差域)の直径が0.1mmだとすると、
「軸線は直径0.1mmの円筒公差域内に収まるように、まっすぐ作ってね。」
という指示になります。
真直度の図面指示の書き方
真直度の図面指示の書き方は、幾何公差記号を使って下の図のようになります。
図の場合は、直径40mmの円筒があって、その軸線が
「直径0.1mmの範囲でぐにゃぐにゃしてても良いよ。」
という指示になります。
ピストンが通るシリンダーなど、精度の必要な製品はこういった指示をしないと、
「思ったより曲がってますね。」
みたいな製品ができてしまうかもしれません。
平面度
平面度のイメージ
平面度のイメージは、「面がどれだけ波打ってて良いか。」という公差指示です。
図のように、ある平面(緑色)が灰色の平行なふたつの平面(平行二平面)の範囲内に収まることを指示するのが「平面度」です。
図の”t”の寸法を0.08mmとすると、
「この面は0.08mm離れた平行二平面内に収まるように、平らに作ってね。」
という指示になります。
平面度の図面指示の書き方
平面度の図面指示の書き方は、幾何公差記号を使って下の図のようになります。
非常にシンプルですよね。
「指示した面が0.08mmの範囲で波打ってても良いよ。」
という指示になります。
作った製品がガッタガタだと困りますよね。
真円度
真円度のイメージ
真円度のイメージは、「ある面を断面で切ったときの真円の程度」を規制している、と考えると良いです。
楕円になるのを抑えるイメージです。
次に説明する「円筒度」と何が違うの?
というと・・・
円筒度は加工も計測も難しくてめんどくさい!
なので、ほんとは円筒度で要求したいところも真円度で妥協する?
いやいや、それだと製品が要求を満たせないですよ。
という、設計と現場との口論が想像できますね・・・。
ちなみに、真円度は円錐面を指定できますが、円筒度は円筒のみの指定です。
真円度の図面指示の書き方
そんな真円度の図面指示の書き方です。
上の図は円筒面も円錐面も同時に指示してしまっていますが、
もちろん必要に応じてどちらかで構いません。
上の図の場合だと、
「この円筒面(or円錐面)は0.03mm離れた同心円の範囲内であれば、
ぐにゃぐにゃしてても(楕円形状になっても)いいよ。」
という意味です。
円筒度
円筒度のイメージ
円筒度のイメージは、「円筒が真っ直ぐ、かつ真円に作られること」を規制しているイメージです。
図のように、ある円筒(緑色)が半透明のふたつの円筒(同心2円筒)の中に収まることを指示するのが「円筒度」です。
図の”t”の寸法を0.1mmとすると、
「この円筒は0.1mm離れた平行2円筒内に収まるように、真っ直ぐ、かつ真円に作ってね。」
という指示になります。
想像するだけで加工が難しいですよね。
円筒度の図面指示の書き方
円筒度の図面指示の書き方は、幾何公差記号を使って下の図のようになります。
上の図の場合だと、
「この円筒面は0.1mm離れた同心2円筒の範囲内であれば、ぐにゃぐにゃしててもいいよ。」
という意味です。
注意点としては、真直度とは異なり、円筒面に幾何公差の矢印を配置する、という点ですね。
線の輪郭度
線の輪郭度のイメージ
※出題頻度が低いので(私は見たことがありません)、余力があったら覚えてください。
線の輪郭度のイメージは、「ある面を切断した時の断面が、想定している輪郭線通りに作られているか」というイメージです。
正確な断面の輪郭線上(オレンジ色の一点鎖線)を中心とする、直径Dの交差域の軌跡の中に収まるように作る、というものです。
線の輪郭度の図面指示の書き方
線の輪郭度の図面指示の書き方は、幾何公差記号を使って下の図のようになります。
上の図の場合だと、
「ある面を切断した時に現れる輪郭線は、直径0.04mmの円の軌跡の範囲内であれば、ぐにゃぐにゃしててもいいよ。」
という意味です。
注意点としては、「直径D」の公差域ではありますが、「Φ」を頭につけないという点です。
「真直度」で円筒公差域を指定された場合は「Φ」がついていましたよね。
混同しないように要注意です。
面の輪郭度
面の輪郭度のイメージ
※出題頻度が低いので(私は見たことがありません)、余力があったら覚えてください。
面の輪郭度のイメージは、「ある面が想定している輪郭通りに作られているか」というイメージです。
「線の輪郭度と言ってること同じ!」
と思われるかもしれませんが、「円筒度」と同じように3次元的に計測して精度を確認する必要があるので、計測機器はどうするの?とかそういった問い合わせが来るかもしれません。
正確な輪郭上(真ん中のグレーの曲面)を中心とする、直径Dの交差域(球)の軌跡の中に収まるように作る、というものです。
面の輪郭度の図面指示の書き方
面の輪郭度の図面指示の書き方は、幾何公差記号を使って下の図のようになります。
上の図の場合だと、
「ある面の輪郭は、直径0.02mmの球で描ける二つの平面内であれば、ぐにゃぐにゃしててもいいよ。」
という意味です。
注意点としては、「線の輪郭度」と同様で「Φ」がつかない点です。
最後に
幾何特性とデータムというのは、業界によっては全く聞いたことのない言葉かと思います。
私も普段図面を描いたり見たりしますが、データム記号に出会ったことはありません。
なかなかイメージがしづらいところではあると思いますが、今回図解することでなんとなくイメージが伝わって頂けると嬉しいです。
1級・2級の試験では必ず出題されるものですので、使い方・書き方を覚えておきましょう。
慣れれば簡単な指示(工場泣かせですが)なので、問題文と記号の組み合わせで覚えてしまえば完璧ですね。
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受検予定の方はぜひ読んでみてくださいね。
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