こんにちは。がじゅまる丸(@gajublog)です。
私は、プラントエンジニアの仕事の一環で「機械・プラント製図技能士」という資格を取得しています。
仕事でCAD(パソコンで図面を描いたり、3Dの計算モデルを作れるツール)を使っている方の中には、製図に関する資格に興味をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
会社によっては「特に資格は必要ないよ」という方もいるかと思いますが、CAD製図の資格は「何か資格が欲しいな」と考えている方にはぜひ取得を検討していただきたい資格です。
実際、私の会社も特に資格は必須ではありませんが、何か資格が欲しいなー、と思って受験して取得しました。
今回は、「機械・プラント製図技能士」という資格について以下の内容を説明します!
- 「機械・プラント製図技能士」とはどんな資格?
- どんなところで使える資格なの?
- 受検するにはどんな道具を準備すればいい?
- 合格するまでにどんな勉強をしたの?
なお、試験は2D-CADでも3D-CADでも受検可能です。私は2D-CADで受検したので、説明の内容も2D-CADをイメージしています。
Contents
「機械・プラント製図技能士」とはどんな資格?
「技能士」という資格について
「機械・プラント製図」に限らず「技能士」という資格は、国(厚生労働省)が定めた実施計画に基づいて実施される「技能検定」に合格したものの総称で、国家資格となります。
「技能検定」については中央職業能力協会が以下のように定義しています。
「働く人々の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明する国家検定制度」
中央職業能力開発協会HPより
「技能士」という資格には様々なジャンルのものが含まれていて、例えば、金属のプレスやフライス作業、家具製作、パン製造作業、フラワー装飾作業・・・などなど
自分が普段作業しているものがあれば、それが国家資格になるかもしれませんね。
こちら(中央職業能力開発協会)のリンクから、どんな職種の資格があるのか確認できます。
「機械・プラント製図」検定について
試験の内容
「技能士」の中でも、私は「機械・プラント製図」の「機械製図CAD作業」という検定を受検しました。
「機械製図CAD作業」は1級〜3級まで用意されていて、技術力に応じて以下のように分けられています。
- 1級(上級)・・・実技試験問題(計算問題を含む)及び課題図(機械装置を組み立てた状態の図面)から、指定された部品図をCADにより作成する。
- 2級(中級)・・・実技試験問題及び課題図(機械装置を組み立てた状態の図面)から、指定された部品図をCADにより作成する。
- 3級(初級)・・・同上(ただし、試験問題は2級よりも簡単)
試験の内容としては
実技試験・・・複数の部品で構成されている機械の組立図から、指定された部品を抜き出し、一品図をCADで作成する。
学科試験・・・製図と機械加工、材料に関する分野から50題
本記事では2級(中級)を受験した時の体験談として紹介しますが、その他の級でも参考としていただける内容としています。
【日程決定!】試験日程(2021年後期は1/23、1/30)
「技能検定」としては年に2回実施されていますが、「機械・プラント製図」については例年、後期に実施されています。
後期の詳細な試験日程が2021年9月に公開されました。
最新情報はこちらのリンクから各都道府県の職業能力開発協会のHPで確認できます(HP>技能検定)。
実施公示 | 令和3(2021)年9月1日(水) |
受検申請受付 | 令和3(2021)年10月4日(月)から 令和3(2021)年10月15日(金)まで |
実技試験 | 令和4(2022)年1月23日(日) |
学科試験 | 令和4(2022)年1月30日(日) |
合格発表 | 令和4(2022)年3月11日(金) |
試験時間と合格ライン
試験時間と合格ラインは以下の通りです。
実技試験は減点方式です。
例えば、
- 必要な寸法が入っていない
- ボルト穴の深さが書かれていない
といった感じです。
どんなところで使える資格なの?
製造業では間違いなく重宝される
CADを使った製図は、製造業であれば間違いなく重宝される能力です。
実際に受検してみてわかりましたが、私が普段行なっている仕事がニッチなジャンルということもあり、「正しい図面の書き方」だけではなく「幅広い機械加工の知識」が必要な試験でした。
つまり、機械製図の技能士であることは、製図の知識だけでなく、機械加工の知識も有している、と証明できる資格といえます。
図面のdrawerとして
図面のdrawerとして仕事をされている方も、お客様に対して自信を持って「仕事を任せてください」と言える資格ですね。
副業として
また、最近はクラウドソーシングでの案件も増えてきています。CADのスキルを持っている方は貴重な存在ですので、資格を取得して副業収入を得る、というのもひとつの使い方でしょう。
受検するにはどんな道具を準備すればいい?
受検するにあたって私が用意した製図道具を紹介します。
- 消せる蛍光ペン
- プラスチック(透明)の30cm定規
- 30cmの三角スケール
- 三角定規、分度器(大きさは小学校で使うようなもの)
- テンプレート
- 関数電卓(一般的な電卓でも可)
詳細はこちらの記事で紹介しています。
合格するまでにどんな勉強をしたの?コツは?
合格までにどれくらいの期間が必要か
学科試験
試験は実技試験と学科試験とに分かれますが、まず、学科試験は1週間あれば十分です。
というのも、基本的には過去問と同等の問題が出題されるためです。
学科試験は実技試験の1週間後なので、実技試験に全力を注ぎ、実技試験後の1週間でひたすら過去問を解きましょう。
試験直前まで見る!くらいの気持ちでいけば、直前で見た問題がたまたま出ることもあります。
実技試験
本題はこちらです。実技試験については、日々の仕事でCAD操作に慣れていることが重要です。
その上で、私が2級合格までどれくらい時間をかけたかと言うと・・・
4時間×10日 = 40時間!
案外、みじかい!基本的には過去問を解いていた感じですね。
大事なのは勉強というよりは、「コツをつかむこと」でした。
過去問の入手方法
実技試験においても学科試験においても、過去問を解くことが非常に重要な試験です。
過去問を入手することはそれほど難しくなく、以下の方法があります。
中央職業能力開発協会のHPから閲覧する
こちらの中央職業能力開発協会のHPから過去問2年分を閲覧することができます。
公式に無料で閲覧できるのは非常にありがたいですね。
過去問が添付されている参考書を購入する
参考書はいろいろありますが、私はこちらの参考書を購入して勉強しました。
こちらの参考書は「実技試験対応」と書かれているので、実技試験に特化したものかなと考えていましたが、学科試験にも通ずる内容も書かれていたので、参考書としてはこれ1冊で十分でした。
その他、私の場合は周りに先人の受検者が多くいたので、社内をあたって過去問を入手することができました。
実技試験対策
実技試験の具体的な流れも含めた詳細な説明はこちらの記事で書いています。
以下の内容は概要として記載しています。
「機械・プラント製図2級」の実技試験を通過するために、ここは抑えておいて!というポイントをざっくり紹介していきます。
- 「絵」にこだわらず、時間内に寸法や注記まで一通り描ききることを優先するべし!
- 「寸法」の抑え方を学ぶべし!
- 「転がり軸受」の図面表現をマスターすべし!
- 「はめあい精度指示」「表面性状指示」での減点を回避すべし!
- 「タップ穴指示」「R加工寸法指示」での減点を回避すべし!
- 「データム」をマスターすべし!(3級は不要)
1. 「絵」にこだわらず、時間内に寸法や注記まで一通り描ききることを優先するべし!
私が最初に過去問を解いたとき、「図面の見方がわからない」ことよりも、「図面の細部まで正しく表現する」ことにこだわってしまい、「絵」を描くだけで相当時間がかかってしまいました。
そこで私が取った作戦は、
①まずは指定された部品についてざっくり正面図・側面図・上面図or下面図を描く(フィレットや面取りはまだ!)
②外形の寸法を入れて間違っていないことを確認
③三面図間で整合を取りながら細部の線を描いていく
④まとめてフィレット、面取りを表現する
⑤詳細寸法や注記を入れて完成!
という流れです。2級(4時間)の時間配分だと、①②で60分、③で90分、④⑤で60分、合計3.5時間で完成させて、残りの30分は見落としがないかの確認に当てる、というのが理想形でしょう。
2. 「寸法」の抑え方を学ぶべし!
図面の基本的な考え方ですが、「寸法」というのは「テキトー」に入れれば良いものではありません。
「適当」に入れる必要があります。
むむ。
考え方は以下のイメージです。製造業に携わっている方であれば気にしている内容かなと思います。
- 設計者として、「どこの寸法を基準にして、どこの寸法を最低限守ってほしいか」が明確であること
- 部品の製作者が「どこの寸法を基準にして」製作していくか、イメージできる
- 製品の寸法計測者が物理的に計測できる寸法を抑える
図面は「設計者と製作者のコミュニケーションツール」です。
良い図面は、それを見るだけで設計者の思いが伝わります。
3. 「転がり軸受」の図面表現をマスターすべし!
2級の課題では「転がり軸受」が頻繁に出題されています。
「転がり軸受」があると、課題図ではその周辺の構造がわかりづらくなっていることが多いので、「転がり軸受の部分はこんな風に書いておけばOKね!」というルールをマスターしておきましょう。
それだけで図面を読み解くスピードが格段に上がります!
4. 「はめあい精度指示」「表面性状指示」での減点を回避すべし!
採点は減点方式なので、「はめあい精度指示」や「表面性状指示」を書き損じることによる減点は非常にもったいないです。
決して難しくはないので、しっかり書き方を覚えて確実に減点を避けるように対策しましょう。
「はめあい精度」については、例えば組立図に「φ122H6/h6」というような記載があれば、穴側は「φ122の開口で、H6の精度」という意味なので「φ122H6」のように寸法表記するだけでOKです。
逆に、挿入する軸側は「φ122h6」のように表記されるべきですが、本試験において軸を作図することはないので、前者のような書き方を覚えておきましょう。
次に「表面性状指示」ですが、毎年恒例で「図面の空白部(右上とか)に一括で指示すること」のような指示が書かれています。「鋳肌面の表面粗さのパラメータはRz200とする」と記載されていれば、下図のように作図して図面の指示された位置に残しておけばOKです。

その他、はめあい部分などの「加工面の表面性状指示」も落としてはいけません。
これは明確にルールが決まっているわけではないのですが、最低限、「摺動部はRa1.6、はめあい部分とガスケット面はRa6.3」くらいに覚えておけば良いでしょう。
極論、怪しいところはRa1.6と書いておけば良いです。
そこは設計者のセンスです。
5. 「穴加工指示」「R加工寸法指示」での減点を回避すべし!
続いて「穴加工指示」と「R加工寸法指示」です。これらも簡単なので落とすことがないように注意しましょう。
「穴加工」は数種類ありますが、「タップ穴」「きり穴」「リーマ加工穴」の3つを覚えておけば十分です。
・タップ穴・・・めねじが切られている穴
・きり穴・・・ただの穴(ザグリの書き方に注意!)
・リーマ加工穴・・・精度や表面性状の向上のための仕上げが施されたキリ穴
例えば「○○に用いるボルトは、メートル波目ねじ呼び径12mmである。これ用のきり穴は直径13.5mmで、黒皮面には直径28mm、深さ1mmのざぐりをする。」のような文章で出題された際は、こちらのような書き方になります。

これを加工穴の位置に矢印で飛ばせばOKです。
「R加工寸法指示」は、例えば問題文に「鋳造部の指示のない角隅の丸みはR3とする」のように指示があるので、その文言をそのまま図面の指示された位置に記載しましょう。
また、「テンプレート」を使って各部のR寸法を計測して、R3ではない箇所については図面内に寸法を記載しましょう。
6. 「データム」をマスターすべし!
2級と3級との違いのひとつで、2級には「データム」を図面内に表現する必要があります。
「データム」とは、製品を製作する際に「なにを基準として、それに対する幾何交差はいくらか」という指示のことを指します。
データムについては少し理解が難しいところもありますが、書き方は難しくないのでルールだけ把握して忘れずに図面に書くようにしましょう。
なお、データムは3級の試験では出題されません。
さいごに
「機械・プラント製図」の資格は、コツさえつかめば決して難しい資格ではありません。
本業にも副業にも使える「技能士」という国家資格を取得して、スキルアップを目指しましょう!
本記事がみなさんのお役に立てれば嬉しいです。
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